防錆・防食溶射 Anti-rust & anti-corrosion thermal spraying
- 鋼材防食技術概要と現状
- 溶射技術の応用分野
- 金属溶射の分類と常温金属溶射の位置付
- 常温金属溶射とは? (Zn/Al擬合金溶射とは?)
- 亜鉛/アルミニウム擬合金溶射皮膜
- 常温金属溶射の防食効果
- 常温金属溶射の作業工程
- 常温金属溶射用標準機器
- 常温金属溶射用標準材料
- 常温金属溶射適用範囲
- 常温金属溶射技術特性
- 常温金属溶射・施工実績例
- パズル®工法 (カタログPDF)
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常温金属溶射とは?(Zn/Al擬合金溶射とは?)
■常温金属溶射(Zn/Al擬合金溶射)はアーク溶射の技術を改良したものであり、従来の金属溶射には不可欠であった、粗面化のための高度なブラスト処理を必要としない技術である。(ブラスト処理の代替として塗付型粗面形成材を使用。)
従来の防食目的の金属溶射法では、亜鉛、アルミニウム、亜鉛/アルミニウム合金など1種類の金属のみを使用していたが、常温金属溶射射工法では亜鉛とアルミニウムを体積比で50:50、質量比で72:28の割合で同時に吹き付ける事により、亜鉛とアルミニウムの溶融された微粒子が重なり合った複合金属溶射皮膜(擬合金)を形成させている。
亜鉛/アルミニウム擬合金溶射皮膜
常温金属溶射の防食効果
溶射皮膜の暴露環境における防食は、皮膜の環境遮断性(水分透過度)と電気化学的防食効果の2つの効果よる。
環境遮断性 (水分透過遮断性)
1. アルミニウム溶射
酸化性生物による皮膜空隙部への充填が徐々にしか行われない為、水蒸気透過度が小さくならない。
2. 亜鉛溶射
短時間で水蒸気透過度は低下するが、塩水噴霧を継続すると溶射金属が消耗するのが早く、水蒸気透過度は大きくなってくる。
3. 亜鉛/アルミ擬合金溶射
短時間で水蒸気透過度が小さくなり、その状態が継続し、亜鉛溶射のように短時間で皮膜が溶解する事はない。
この事より、空隙が酸化物で封孔されたZn/Al擬合金皮膜は防錆耐久時間が長く期待できる事がわかる。
電気化学的防食作用(犠牲陽極作用)
【犠牲陽極防食法】
鉄より卑な電位(電解質溶液中の電位に対して)を持つ金属を鉄と電気的に接触させて、卑な電位の金属が溶出する事により、鉄の電位を負に分極させて鉄の腐食を防ぐ防食法。
【電気化学的防食作用】
防食溶射は鉄の自然電位より卑な金属を熱や電気で溶融し、粒状に吹き付けして素地表面に金属皮膜をつくり犠牲陽極作用の効果を得る。これを金属溶射による電気化学的防食作用という。
上記グラフ(溶射皮膜の塩水噴霧試験後の自然電位を測定した実験結果)の通り、Zn/Al擬合金溶射は、5,000時間後も鉄の自然電位-650mVに対し、-900mVを維持しており、良好な電気防食作用を維持している事が確認出来ている。